2013年11月28日木曜日

課題研究懇談会「危機の克服と地域コミュニティ」第6回研究会(2013年度第2回研究会)のお知らせ

延期となっておりました、課題研究懇談会「危機の克服と地域コミュニティ」第6回研究会(2013年度第2回研究会)の日程が決定いたしました。
日程のみの変更であり、内容・場所等は以前の予定と変わりません。
みなさま、ぜひご参加ください。


日時 :平成26年1月17日(金)、13:30~18:00
会場 : 名古屋大学文学研究科・文学部1階、大会議室(110教室)

内容 :

1)テーマ 「無事を求めつつ、危機と向き合う人びと─枝下用水史130年史からみる─」

2)趣旨

 矢作川から取水する枝下用水は、現豊田市の重要な農業用水としてこの地を潤している。現在、豊田土地改良区において枝下用水130年史の編集が進められており、このセッションではその資料にもとづいて、枝下用水流域という実態的地域コミュニティにおける〈危機〉と〈無事〉を照らし出すことを試みたい。
 枝下用水史の基本的な流れから、明治期(1880年代)、現豊田市の農村地域における水不足や氾濫といった水関連の危機を管理する事業として、まずはその〈危機の克服〉の試みを読みとることができる。この時期、国家的公共事業としてではなく民間営利事業として用水開削が位置づけられていたことで、多くのエージェントが介在する契機となったことも特徴である。しかし枝下用水の完成後も、農業用水が安定的に供給され〈無事〉が獲得されたかといえばそうとも一概にいえない。とくに国家的〈有事〉であった敗戦とその後の農村復興、さらに高度経済成長期や、グローバル化の波が押し寄せるなかでの大きな変化など、危機は克服されるというよりつねに引き続いて起こる。枝下用水コミュニティの人びとは、〈危機〉に持続的に向き合いながら暮らしを成り立たせてきたわけである。
 そのような暮らしのなかで、このセッションでは明治期の用水開削事業をめぐる人的背景、ならびに戦後高度経済成長期における農村の変容というふたつの事象に着目し、そこでの史資料を仔細に検討することを通して、無事を志向する姿を枝下用水130年のあゆみのなかから探っていきたい。

枠組としての「無事」その他
 2013年度第一回課題研究懇談会における鳥越皓之発表「日本の村落研究史」において、日本のムラにおける危機対応は〈無事〉にいかに達するかという課題にもとづいて組織化されてきたことが指摘された。
 この指摘を受ける形で、このセッションでは実態的地域コミュニティにおける〈危機の克服〉を、〈無事〉への希求という形で主題化してみたい。〈危機〉を完全に克服し排除された段階というのが想定しにくい現実に対して、完全に乗り越えるのではなく、〈危機〉を〈無事〉のほうへ埋め込んでいくプロセスが地域コミュニティにいかに見られるかを、明治期と高度経済成長期を中心に検討することをめざしたい。
 その際、〈危機〉と〈無事〉の転換を時代区分的に捉えることも可能と思われるが、歴史的動態をよりダイナミックに叙述するために、このセッションでは過剰と不足のバランスを補助線として考えたい。すなわち、コミュニティには往々にして何ごともない当たり前から過剰もしくは不足に陥る自体が生じ、それが〈危機〉となり、人びとはつねにそれをゼロポイントに修復しようとするのが〈無事〉への営みである、という基本ストーリーである。
 もう一点、この〈危機〉を〈無事〉へ埋め込むプロセスから、それにかかわる個人、中間集団、国家やグローバル社会などの関与も明らかにすることによって、公共私にわたる危機とのつきあい方も捉えることができるはずである。それを通して、〈無事〉を志向する回復力(レジリエンス)を備えた主体として地域コミュニティとしての枝下用水を描き出すことをねらいとしたい。


3)当日のプログラム

 A)話題提供
  ・熊澤美弓 (豊橋創造大学)
     「用水開削期における人物交渉誌と開削者顕彰」
   逵志保(愛知県立大学)
   「高度経済成長期における農家長男の〈危機〉と葛藤」
  ・川田牧人(中京大学)
    全体概要とコメント

 B)総合討論(参加者全員)

 終了後、懇親会


問い合せ先 :佐々木重洋(名古屋大学・文学研究科)
sasaki@lit.nagoya-u.ac.jp

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